理事長は医療法人からお金を借りてもOK?

医療法人からお金を借りている理事長はなにげに多いです。

顧問税理士さんが「(税務上は)問題ない」と言ってしまうことがあるからです。

では、医療法上はどうなのでしょうか。

結論から言うと、原則NG、例外的にOKなケースありです。

これから借入を考えている先生、すでに借り入れている先生。

例外的にOKなケースに該当するかご確認いただければと思います。

1.原則として理事長貸付はNG

まず、大前提のお話しです。

理事長はもちろん、役員が医療法人からお金を借りるのは原則NGです。

理由として2つ見てみます。

  

①医療法人は貸金業者ではない

医療法人ができる業務は「業務の範囲」で決められています。

そこに列挙されていない業務はできません。

なので、医療法人が誰かにお金を貸してその利息収入を得ることを生業とすることはできません。

ここで「無利息ならいいんじゃない?」という疑問がでてくると思います。

  

②医療法人は配当禁止

医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。

医療法第五十四条より

株式会社と違って医療法人は「非営利法人」です。

つまり、利益が出たからといって株式会社のように配当ができません。

「お金を借りるのと配当は違うでしょ?」といった疑問がでてきそうですが。

「配当行為」そのものではなくても、実質的に配当のような行為は「配当類似行為」といって禁止されています。

一般的にお金を借りると利息がつきます。

役員が法人から無利息でお金を借りれば、その役員は医療法人から利息分の利益を受けることになります。

そのため、無利息は配当そのものではありませんが、配当に似た行為(配当類似行為)として禁止されています。

つまり、医療法の「配当禁止行為」に抵触するので無利息の理事長貸付はNGです。

以上より、理事長はもちろん他の役員も医療法人からお金を借りることは原則としてNGです。

次で例外的に借りれるケースを述べます。

  

2.どんなケースなら借りることができるの??

例外的なケースとして、福利厚生として借りることは可能です。

役職員への金銭等の貸付は、附帯業務ではなく福利厚生として行うこと。

この場合、全役職員を対象とした貸付に関する内部規定を設けること。

厚労省「医療法人の業務範囲」より

具体的には医療法人法人で「全役職員を対象とした」福利厚生として貸付の内部規定を作り、その規定に沿って借りることができます。

「全役職員」が対象なので、理事長や理事以外の従業員も法人からお金を借りることができる規定が必要です。

もちろん「理事長やその親族があからさまに優遇された内容の貸付規定」は配当類似行為になるのでご注意ください。

さらに、理事長や理事が法人からお金を借りる場合は「利益相反取引(理事長と法人の利益が相反する取引)」になるので、理事会の承認も必要になります。

  

3.理事長が法人にお金を貸すのは?

上述のように、理事長が医療法人からお金を借りるのは原則NG、どうしても借りる場合は2.の諸条件をクリアする必要があります。

では、逆のケースはどうなのでしょうか。

理事長が医療法人にお金を貸す場合。

理事長が医療法人から利息を受け取れば「配当類似行為」になります。

なので、無利息であれば、理事長から医療法人にお金を貸すことはOKです。

同じように理事長個人が医療法人に金銭を寄付することもOKです。

  

4.まとめ

理事長はもちろん、役員が医療法人からお金を借りるのは原則NGです。

例外的に借りる場合は次の2点をクリアしましょう。

  • 医療法人の全役職員が借入可能な福利厚生の規定を作る
  • 理事会の承認を得る

たとえ税務署がOKだったとしても、医療法「も」クリアしないと指導や過料の対象になります。

知らず知らずのうちに借りている理事長もいらっしゃるのですが。 「知らなかった」「税理士さんが教えてくれなかった」「○○さんもやっている」が通用しないのが法律の怖いところだと思います。