どんな理由なら医療法人は解散できる?(医療法人の解散事由)
「直近で法人化した医療法人を解散したい」というご相談が年に数件あります。
「さすがにそれは難しいです。。」という回答になることが多いのですが。
では、なぜ難しいのでしょうか。
何年経過すれば、どんな理由なら解散できるのでしょうか。
一緒にみていきましょう。
医療法人制度の趣旨
冒頭で記載しましたが、「直近で法人化した医療法人を解散したい」は難しいです。
直近NGなら3年経てばOK?5年は?10年は?
まずはその疑問についてみていきたいと思います。
医療法人制度の趣旨
そもそもですが。
医療法人は、医療機関に法人格を付与し永続的に地域医療を行えるように、という制度です。
永続的に、継続的に、というところがポイントです。
設立趣意書
医療法人を設立する時には申請書に「設立趣意書」という書類を添付します。
どのような経緯や理由で医療法人を設立するのか記載し、設立代表者の名前で都道府県知事へ提出します。
管轄によって記載内容は若干異なりますが。
かなりざっくりとまとめると「家計と経営を分離し、永続的に地域医療に貢献するために医療法人を設立したいです」という内容です。
つまり、簡単に解散することは前提としていません。
設立後10年、20年経過していても、制度としては継続して地域医療に貢献してください、という趣旨になります。
といっても解散できない、というわけではありません。
ではどのような理由(事由)であれば解散できるのでしょうか。
医療法人の解散事由
確かに医療法人は永続性、継続性を趣旨とした制度ですが。
解散制度もちゃんとあります。
どのような理由(事由)なら解散できるかは医療法第五十五条で定められています。
医療法第五十五条
社団たる医療法人は、次の事由によつて解散する。
一 定款をもつて定めた解散事由の発生
二 目的たる業務の成功の不能
三 社員総会の決議
四 他の医療法人との合併(合併により当該医療法人が消滅する場合に限る。次条第一項及び第五十六条の三において同じ。)
五 社員の欠亡
六 破産手続開始の決定
七 設立認可の取消し
一つ一つみていきましょう。
一 定款をもつて定めた解散事由の発生
管轄によっては定款に「診療所のすべてを廃止したとき」という文言が入っています。
この場合は診療所のすべてを廃止したときは解散事由の発生になります。
※厳密には本来業務(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院)すべての廃止になるので、法人によって文言は異なります。
皆様の定款には、医療機関の名称と住所が記載されていますよね。
例:〇〇クリニック 神奈川県横浜市〇〇区〇丁目〇番〇号
↑のように定款に記載のある本来業務(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院)すべてを廃止したときです。
定款に「診療所のすべてを廃止したとき」が入っていない場合「定款に入れれば解散できるの?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが。
定款に入れるためには、定款変更認可申請が必要です。
定款変更できるかどうかは管轄によって対応が異なります。
二 目的たる業務の成功の不能
目的たる業務とはなにか。
【厚労省 モデル定款より】
第2章 目的及び事業
第3条 本社団は、病院(診療所、介護老人保健施設、介護医療院)を経営し、科学的でかつ適正な医療(及び要介護者に対する看護、医学的管理下の介護及び必要な医療等)を普及することを目的 とする。
↑のように、皆さんの定款には第2章の目的及び事業、という章があります。
これは本来業務を指し、附帯業務は含まれません。
簡単にいうと、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院です。
この4つのいずれも経営することが難しい状態になることが「目的たる業務の成功の不能」です。
では経営することが難しい状態かどうかの判断ですが。
解散認可申請し、医療審議会にかけられ判断されます。
三 社員総会の決議
医療法人の解散決議には、社員総会で総社員の4分の3以上の賛成が必要です。
ただし、社員総会の決議があればどのような理由でも解散できる、というわけではありません。
「二 目的たる業務の成功の不能」と同じく解散認可申請し、医療審議会にかけられ判断されます。
四 他の医療法人との合併
合併により当該医療法人が消滅する場合に限る、という但し書きがありますが。
これは解散、というよりも合併手続きですね。
医療法人が合併するときに消滅する医療法人は解散します。
合併手続きの一環としての解散なので「医療法人を解散したい」というご相談とはまた別になります。
なお、医療法人が合併する場合には認可申請が必要です。
五 社員の欠亡
医療法人の社員は最低3名以上(都道府県によっては4名以上)ですが。
この社員がだれもいなくなった状態が「社員の欠亡」です。
六 破産手続開始の決定
破産手続きにあたっての解散です。
七 設立認可の取消し
医療法人の設立認可の取消しによる解散です。
まとめ
そもそも医療法人は永続性に、継続的に、という趣旨で設立しています。
そのため、どんな理由でも解散できる、というわけではありません。
管轄によっても解散の対応は異なります。
しかし、解散制度はありますので、まずはお気軽にご相談ください。
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