医療法人の引っ越し(主たる事務所、本院・分院の移転手続き)

注)移転をご検討されている医療法人さまが、大まかに手続きをイメージできるように解説しています。

専門的な用語や詳細部分は省いて簡単に解説しています。

「専門的なことを詳しく知りたい!」といった方にはもの足りないかもしれません。

医療法人の移転手続き

医療法人が引っ越しをする時は、移転手続きが必要になります。

また、引っ越しするといっても次の2パターンあります。

  1. 主たる事務所(医療法人の事務所のみ)の移転
  2. 本院または分院の移転

以下、それぞれ簡単に解説します。

  

1.  主たる事務所(医療法人の事務所のみ)の移転

この手続きは比較的簡単です。

といっても、クリニックの移転手続きや分院を開設する時など他の定款変更と比べてです。

なぜかというと、定款変更の時の書類が少ないからです。

厳密には 「定款変更届」 というものになります。

※もちろん、他の手続きも一緒にする場合には異なります。

手続き自体はシンプルです。

移転先住所で登記をして定款変更届と登記事項届(正式名称は役所により異なります)を提出。

保健所や厚生局などへ変更(診療所の開設者の住所変更)を届出ます。

注)現住所と違う都道府県などへ移転する場合は手続きが異なります。

2. 本院または分院の移転

病床のないクリニックが同一管轄内に移転するケースを解説します。

注)2kmよりも遠い場所へ移転するケースは、手続きが異なりますので省略します。

本院、分院どちらの移転手続きも基本的には同じです。

このケースは医療法人設立や分院開設の手続きに似ています。

よく勘違いされる方がいらっしゃるのですが…

道路を挟んですぐ向かい、というように近所へお引っ越しする場合でも手続き上は決して簡単ではありません。

同じ建物内の移転でも同じです。

手続きが前後する部分もありますが、大まかに次のような流れになります。

  1. 事前準備
  2. 定款変更認可申請
  3. 登記
  4. 保健所
  5. 厚生局
  6. 公費負担
    
1.  事前準備

医療法人のクリニックが移転する場合には 「定款変更認可申請」 という手続きが必要になります。

定款の目的に記載されている診療所の住所を変更するためには都道府県知事の認可が必要だからです。

(本院移転の場合はあわせて主たる事務所も変更するケースが多いと思います)

この申請をする前に、役所に事前審査の書類を提出します。

その時までに必要な準備としては主に次の3つになります。

  1. 場所と内装(図面) ⇒ 土地・建物を借りる場合は賃貸借契約書(案)が必要です。
  2. 資金はどうするか ⇒ 借入れる場合は金銭消費貸借契約書や返済予定表などが必要です。
  3. 内装工事や移転費用の見積り

他にも必要書類はありますが、時間がかかる部分は主にこの3つです。

  

2. 定款変更認可申請

必要書類をそろえたら、事前審査用の書類を作成して役所へ持ち込みます。

役所の審査などを経てOKがでたら本申請。

ハンコを押して申請します。

事前審査用の書類提出から認可が下りるまでの期間は2~3か月くらいとアナウンスしている役所が多い印象です。

※申請の内容、時期、役所によって期間は異なります。

  

3. 登記

定款変更の認可が下りたら登記をします。

登記事項証明書に新住所が記載されるようになります。

登記が終わったら役所へ 「登記事項届」 を提出します。

※届出書類の正式名称は役所により異なります。

  

4. 保健所

たとえ近距離の移転でも、手続き上は「診療所の廃止&新規開設」になります。

移転先の診療所を新規開設するため、保健所に開設許可申請を出します。

開設許可が下りて移転先診療所が開院したら10日以内に開設届を提出します。

また、現クリニックの廃止(廃院)の手続きをします。

クリニックが自費診療のみの場合はここまでの手続きで終了です。

  

5. 厚生局

保険診療をしている場合には、保険医療機関指定申請が必要です。

移転前のクリニックで使用していた保険医療機関コードは移転先で使用できなくなるからです。

ですので、現クリニックのコードを廃止して、移転先のクリニックで使用するコードを新たに取得します。

ここで注意していただきたいのですが…

引っ越し先が近所( 2km圏内 )であれば遡及が適用されます。

つまり、現クリニック ⇒ 移転先クリニック での保険診療をタイムラグなしに開始できます。

注)引っ越し先が2kmよりも離れている場合にはこの 「 遡及 」 が使えません。手続きが異なるので省略します。

また、現クリニックで届出ている施設基準も遡及の手続きができます。

※移転先で施設基準を新たに届出る場合は遡及が適用されません。

  

6. 公費負担

生保や労災など公費負担を取り扱っている場合は、これらも移転先で継続する手続きが必要です。

保険指定と同じようにこれらも期限内に手続きをすればタイムラグなしで引継げます。

以上、かなり簡単に医療法人の移転手続きを解説しました。

定款変更以降は医療法人設立時と似ています。

( 実務上は異なる部分もありますが、イメージとしては似ています )

また一部省略している手続きもありますが、おおまかな流れとしてはこのような感じになります。

期間はトータルで5~6か月ほどかかります。

事前の準備や手続き手順を誤ると予定していた移転日に開院が間に合わなくなることもあります。

移転の時期はくれぐれも余裕をもってご計画ください。

個別具体なご相談は「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。

  

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